赤木凡豚の考察レポート

しがないSF好きな暇人の赤木凡豚です。各種考察や感想、思い付いたことなんかをつらつらと記録します

PSYCHO-PASS SS Case.2について1

【注意⚠】ネタバレがかなりあります

 かなり遅くなりましたがPSYCHO-PASS SS Case.2を見てきました。一期二期劇場版とそれぞれのストーリーが絡み合った展開や、PSYCHO-PASSの不憫美人キャラとして私が地味に推してる青柳監視官の活躍なんかが、こう、心にグッと来ましたね。しかし何といっても須郷執行官の意外な、そして不幸な過去が明かになり、ただのイケメン脇役から脱皮したのがとても印象に残ってます。

 さて劇中で明かされなかった謎に「原潜の使い道」があります。模擬人格の大友逸樹が「復讐と聞かれればその通りだ」と言っていましたが、ここでいう復讐は劇中で大友燐が行ったものとは確実に異なります。何故なら彼女の復讐は須郷さんを餌にフットスタンプ作戦の関係者を釣りだし、自らの手で一網打尽にするというものであり、かの原潜を利用する必要は微塵もありません。したがって彼もしくは彼らの復讐計画は原潜を利用したより大規模なものであったことがうかがえます。

 では本来の復讐計画はなんだったのでしょうか。ここで考えねばならない事が3つあります。一つ、フットスタンプ作戦で死んだ大友逸樹の模擬人格はいつ、いかにして毒ガスの事実を知ったのか。二つ、何故須郷さんにメッセージを残したのか。三つ、復讐計画はいつ立てられたのか。

 一点目について今晩はまず考えていきたいと思います。作戦参加者の須郷さんが作戦中は勿論その後クラッキングをしても知らなかった毒ガスの事実を何故大友逸樹の模擬人格は知っていたのでしょうか。確かに大友逸樹の模擬人格は、生前の本人による同期とプログラミングを基礎に大友燐が手を加えて完成させたものです。しかしそうだとすると、時系列からして大友燐が何らかの方法で毒ガスの事実を入手し、それをスパーリングロボにダウンロードしたと考えないとなりません。ではその事実を大友燐はいつ知ったのでしょうか。これを考え始めるとおかしなことに気づきます。作戦関係者ですらない大友燐があまりにも作戦のことを知りすぎているのです。これについては、誰かが大友燐に教えたか、大友燐が関係者を籠絡して聞き出したかの二者択一となりますが、彼女の実直で素直だがストレスを過度に背負い込む性格からして後者より前者の方が可能性が高いでしょう。しかし毒ガスの事実を知っていて、かつそれを大友燐に教える人がいたのでしょうか。恐らく大友逸樹を除いていないでしょう。したがってこの事実をスパーリングロボに送ったのは死ぬ直前の大友逸樹その人だったとしか考えられません。

 しかしここで注目してほしいのが二人の復讐の動機です。彼女の復讐の動機はやり場のない憎しみの発散でした。大友逸樹が出撃前に残した「強く生きてくれ」という言葉を曲解して自己正当化を図っていましたが、それでも向けられた怒りの矛先はやはり作戦を指揮して大友逸樹を殺した上層部の個人なのです。そのためストーリーでは国防省と外務省への攻撃は陽動であるかのように語られていました。一方で大友逸樹は生前からシビュラシステムによる殺人の正当化に疑念を抱き、模擬人格も捨て駒とされたことより国防省と外務省が化学兵器を使用したことに憎しみを向けていました。そこから自然と導き出される復讐の動機は、非人道的手段を正当化する非人間的な国防省と外務省への憎悪をシビュラシステムに捕らわれない(≒合法的な)方法で実行することであると言えます。復讐について聞かれたときの「彼らがやったようなことを彼らに味わわせてやるのさ」という台詞はその証左です。したがって大友逸樹にとって国防省と外務省への攻撃は主攻であって陽動ではありません。すなわちこの作品では同時に二つの復讐がさも一つであるかのように描かれながら進展していたのです。

 いかがでしょうか。次回は二点目と三点目について考えてみます。