赤木凡豚の考察レポート

しがないSF好きな暇人の赤木凡豚です。各種考察や感想、思い付いたことなんかをつらつらと記録します

夢日記1

 昔こんな夢を見た。

 私はあるお屋敷で宴会に参加していた。そこは本家のお屋敷らしく、真っ昼間から親戚の子達と鬼ごっこをしても大人の迷惑にはならなかった。私はトイレに隠れた。電気のないトイレは、足元の小窓も閉まっていて真っ暗だった。ドタドタドタ。扉の外から足音がする。和式便座に跨がり私は息を潜めた。タッタッタッタッ。足音が少しずつ遠ざかっていく。30分ほどたっただろうか。外から音はしてこない。私はトイレの戸を開けて外に出た。外はすっかり夕方で、夕日が綺麗に顔を染めた。隠れる前までの喧騒が嘘のようにお屋敷は静かだった。

 「どこかに出掛けたのだろうか。」

 誰もいない静かな廊下を一人で歩いていると、不意に後ろから走る音がした。バタバタバタ。しまった、見つかったか。鬼から逃げようと走り出した。目の前に突然現れた従兄弟の脇を走り抜けて私は廊下を全力で駆けた。

 「ぎゃっ。」

 従兄弟の声だ。振り向くと従兄弟は倒れていた。手に鉈を持った男が従兄弟を見下ろしている。ヤツが来た。私はそれがなんなのか一瞬でわかった。昔からそうだった。ヤツから逃げねば殺される。足元にはヤツの殺した死体がごろごろと転がっている。逃げねば。私は走り出した。車より速く走った。逃げる私をヤツは追いかけてくる。角で撒こうとしてもヤツは付いてくる。間違いない。いずれ追い付かれる。そうだトイレに逃げよう。木製の引き戸は運良く開いていた。私はトイレに滑り込むと鍵をかけて和式便座に跨がった。同時に扉が叩かれる。こんなやわな扉では長く持たないだろう。薄明かりのトイレの中で私は必死に助かる手立てを考えた。薄明かり?その明かりはどこから来てるんだ。足元に延びる影がその謎を明かしてくれた。足元の小窓から夕日が差し込んでいる。さっきは閉まっていたはずなのに。だがそんなことに構ってる余裕はなかった。私は縦十センチほどの小窓に右足を突っ込んで脱出を図った。ゴムのように伸び縮みする体のお陰で、私は小窓から吐き出されるように脱出できた。

 窓の外は見知らぬ住宅街だった。周りを見ると三方に壁があって右手に道が延びている。確かにどの家庭のトイレの小窓も行き止まりの道と繋がっているのだから、そこから脱出したらこういう場所に出てくるのは当然であった。あのお屋敷に戻らねばならない。私は見知らぬ町を全力で走った。道には覚えがあるからどこを走ればいいかは分かっていた。常に前に延びる影を踏みながら、私は見知らぬ町の見知った道を駆け抜けた。お屋敷まではわずか24時間しかかからなかった。

 お屋敷に着くと、そこには何もなかったように綺麗で静かな空間が広がっていた。板張りの廊下は作りたてのように白く輝いていた。私は迷わずトイレへ向かった。ヤツがいたとしてもまた逃げれば良いと楽観的に考えていた。傷一つないトイレの戸を開けるとやはりそこは真っ暗だった。当然小窓もしまっている。だんだんと不思議に思えてきてもしやこれは夢ではないかと感じ始めたその時だった。バタバタバタ。足音が近づいてくる。ばっと後ろを見た。ヤツだ。私は急いでトイレに隠れた。ヤツはトイレの戸を激しく叩いている。私は昨日のように小窓を開けて逃げようとした。小窓を開けると地面に苔と石が見える。トイレの外は庭なのだから当然だ。私は何の躊躇いもなく右足を突っ込んだ。窓枠に当たりながら右足は庭に出た。だがそれまでだった。縦十センチほどの小窓を私の体は通れなかった。トイレの戸から鉈の刃が飛び出た。鉈の断面通りに空いた穴からヤツの息づかいが聞こえる。だが私は脱出できない。もう死んでしまうな。

 ここで目が覚めた。